英検取得者が共通テストで何点取れるか?データで見る現実的な目安

■はじめに

受験生の皆さん、こんにちは。

「英検2級持ってるけど、共通テストで何点くらい取れるんだろう?」「準1級まで取る必要あるのかな?」そんな疑問を持っていませんか?

今回は、最新の研究データと過去の蓄積データを総動員して、英検の級やCSEスコアから共通テスト英語の得点を「現実的に」見積もる方法をお伝えします。

大学の換算制度の話ではなく、純粋に「実力として何点取れそうか」という話です。

⚠️ 重要な注意事項
この記事で紹介するデータは統計的傾向を示すものです。個人の実際の得点は、対策の程度、体調、メンタル面など多くの要因によって変動します。
目安として参考にしつつ、必ず実際の過去問演習で自分の実力を確認してください。

■最新研究が明かす「本当の相関関係」

大規模調査データから見えてきた現実

データの背景:近年、複数の大学で英語外部試験と共通テストの相関関係を調査する研究が行われています。例1 例2

これらの研究は、同一の受験生が両方の試験を受験した実データを基にしており、従来の理論値とは異なる現実的な数値を提示しています。

従来「英検2級なら共通テスト150点相当」といった換算表が一人歩きしていましたが、実際のデータを詳細に分析すると、状況はもっと複雑であることが分かってきました。

主要な研究結果の概要

  • 相関係数の実態:英検と共通テストの相関は中程度(0.5~0.6台)にとどまる
  • 得点分布の広がり:同じ英検級でも共通テスト得点に大きなバラつきが存在
  • 試験形式の影響:センター試験時代と比べて相関が低下している傾向

 

相関係数って?

みなさんは「勉強時間が長いほど成績が良くなる」とか「ゲーム時間が長いと睡眠時間が短くなる」といった関係を感じたことはありませんか?

相関係数は、こうした2つの事柄がどのくらい関係しているかを数字で表したものです。

相関係数は、2つのデータの関係の強さと方向を -1から+1の範囲 で示します。まるで2つのデータが手をつないでいる強さを測るような指標だと考えてください。

数値の見方と意味

相関係数の値によって、関係の強さが分かります:

+1に近い値(+0.7以上):強い正の相関 一方が増えると、もう一方もほぼ確実に増える関係です。グラフにすると点が右上がりの直線に近く並びます。

+0.3~+0.7:中程度の正の相関 ある程度は連動するけれど、必ずしもそうとは限らない関係です。

-0.3~+0.3:ほとんど相関なし 2つのデータにはっきりした直線的な関係がありません。グラフでは点がバラバラに散らばります。

-0.3~-0.7:中程度の負の相関 一方が増えると、もう一方がある程度減る傾向があります。

-1に近い値(-0.7以下):強い負の相関 一方が増えると、もう一方がほぼ確実に減る関係です。グラフでは点が右下がりの直線に近く並びます。

相関関係 ≠ 因果関係

これが最も重要なポイントです!相関があっても、必ずしも一方が原因でもう一方が結果とは限りません。

 「アイスクリームの売上」と「水の事故件数」には正の相関がありますが、アイスを食べると水の事故が起きるわけではありません。

実際は「暑い日」という共通の原因が両方に影響しているのです。

 

センター試験時代からの変化

2015年に日本英語検定協会が発表したセンター試験との相関係数は0.894という非常に高い数値でした。しかし、共通テストになってから状況が大きく変わっています。

試験形式 主な出題内容 英検との相関傾向
センター試験(~2020年) 文法問題、発音・アクセント、語句整序、長文読解 高い相関(0.8台後半)
共通テスト(2021年~) 長文読解中心、図表問題、実用的なリスニング 中程度の相関(0.5~0.6台)

相関低下の主な要因:

共通テストでは文法や語彙の知識を直接問う問題が大幅に減少し、代わりに速読力や情報処理能力がより重要になりました。

英検で高得点を取れる語彙・文法力があっても、共通テスト特有のスキルがなければ高得点につながりにくい構造になっています。

 

■級別・スコア別の現実的な目安点数

実データから見る得点分布の実態

研究データから明らかになった最も重要な発見は、「同じ英検級でも共通テスト得点に大きなバラつきがある」ということです。以下に、より現実的で詳細な分析結果をご紹介します。

英検3級(CSE1400~1699程度)
共通テスト得点予想範囲:70~120点
中央値付近:約100点
特徴:英文を読むための最低限の語彙・文法力はあるが、読解精度に課題。
英検準2級(CSE1700~1949程度)
共通テスト得点予想範囲:95~150点
中央値付近:約120点
特徴:高校基礎レベルの英語力はあるが、共通テストの長文量と時間制限、後半の難解な長文に苦戦する傾向。リスニングでは比較的善戦。
英検2級(CSE1950~2299程度)
共通テスト得点予想範囲:115~175点
中央値付近:約140点
特徴:大学受験に必要な基礎力は備えているが、共通テスト特有の出題形式への適応度で大きく差が出る。センター試験なら平均151点だったが、共通テストでは10~15点程度下がる傾向。
英検準1級(CSE2300~2599程度)
共通テスト得点予想範囲:145~185点
中央値付近:約165点
特徴:高い語彙力と読解力により、安定して高得点が期待できる。ただし、時間配分のミスや問題形式への不慣れで失点する可能性も。
英検1級(CSE2600以上)
共通テスト得点予想範囲:165~点
中央値付近:約180点
特徴:圧倒的な英語力により高得点が期待できるが、共通テストの「解きやすさ」が逆に油断を招く場合も。

■なぜこんなにバラつくのか?

測定している能力の違い

英検と共通テストでは、重視している英語力の側面が異なります。この違いが得点のバラつきの主要因となっています。

 

英検で高得点を取りやすい人の特徴

  • 語彙力〇:英検では語彙問題が配点の大きな部分を占めるため、単語力が高い人は有利です。特に準1級以上では、学術的・専門的な語彙の知識が直接得点につながります。
  • 文法知識〇:英検では文法の正確性が重視されます。特にライティングでは文法ミスが減点対象となるため、正確な文法知識を持つ人が高得点を取りやすくなっています。
  • 4技能バランス〇:英検はリーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの4技能を総合的に評価します。また、合計点が高くても一技能が際立って低いと不合格になるため、どの技能も平均的にできる人に有利です。

共通テストで高得点を取りやすい人の特徴

  • 速読・速解〇:共通テストは時間との勝負です。特にリーディングでは、正確性よりも効率性が重視される傾向があります。速読力がある人は有利です。
  • 情報統合〇:複数の文章や図表から情報を統合して答える問題が多く、情報処理能力が高い人が有利です。これは英語力だけでなく、国語力や論理的思考力も関係します。
  • 実践的リスニング〇:共通テストのリスニングは、英検よりも自然な会話やより実践的な場面を扱います。TOEICのリスニングに慣れている人は、英検リスニングよりも共通テストリスニングで高得点を取りやすい傾向があります。

 

時期的要因と個人的要因

英検取得時期による影響

  • 取得から半年以内:実力がほぼ維持されており、予想得点の信頼性が高い
  • 取得から1年程度:継続的な学習をしていれば実力維持、していなければ得点低下の可能性
  • 取得から2年以上:特にスピーキング・ライティング力は低下するが、リーディング・リスニングは比較的維持される傾向

 

年度による共通テストの難易度変動

共通テストは年によって平均点が大きく変動します。これも個人の得点予想を複雑にする要因の一つです。

実施年度 リーディング平均点 リスニング平均点 合計平均点 特徴・難易度
2021年(第1回) 58.80点 56.14点 114.94点 試行錯誤の年、やや易化
2022年 61.80点 59.45点 121.25点 標準的な難易度
2023年 53.81点 62.35点 116.16点 リーディング難化
2024年 51.54点 67.24点 118.78点 リーディング更に難化
2025年 57.69点 61.31点 119.00点 リーディング易化
※大学入試センター公表データより作成

■実践的アドバイス:英検スコアを最大限活かすための戦略

英検レベル別の共通テスト対策法

英検3級~準2級レベルの人向け対策

最優先課題:基礎語彙力の底上げ

共通テストレベルの語彙(約4000語)を確実に習得することが最重要です。英検準2級の語彙帳に加えて、入試基礎~標準レベルの語彙集(ターゲット1400など)を併用しましょう。1日50語程度のペースで、3ヶ月で基礎を固めることが可能です。

長文読解の基礎体力づくり

共通テストでは約6000語の英文を80分で処理する必要があります。まずは400語程度の文章を10分で読める速度を目指しましょう。パラグラフごとに要点をつかむ練習を重ねることが効果的です。

リスニング対策の重点化

リスニングは比較的得点しやすい分野です。毎日30分程度、共通テスト形式の問題に触れることで、着実に得点向上が期待できます。

 

英検2級レベルの人向け対策

時間配分の最適化

英検2級レベルの実力があれば、時間をかければ内容理解はできるはずです。問題は時間配分です。リーディング80分をどのように配分するかの目安をたてましょう。

目安時間を超えた場合は、もう少しで解けそうでも見切りをつけて次に移行することが重要です。

図表問題への慣れ

英検にはない形式の図表問題に慣れることが重要です。グラフ、表、広告などから必要な情報を素早く読み取る練習を重ねましょう。

複数文書問題の攻略法

複数の文書を関連づけて答える問題では、まず問題文を読んでから必要な情報を探すという逆算的なアプローチが効果的です。

 

英検準1級以上レベルの人向け対策

確実性の追求

高い実力があっても、共通テストでは「解けるはずの問題を確実に得点する」ことが最重要です。難しく考えすぎずに、素直に問題を解くことを心がけましょう。

時間の有効活用

準1級以上の実力があれば、時間は余るようにできるはずです。余った時間で見直しを行い、ケアレスミスを防ぐことに集中しましょう。

リスニング満点の狙い方

準1級以上なら、リスニング満点が狙えます。問題の先読み、メモ取りの技術を磨いて、安定して9割以上を取れるようにしましょう。

 

■英検の学習経験を共通テストで活かす方法

英検学習の「転用可能な部分」

語彙力の活用:英検2級までの語彙の約8割は共通テストでも出題されます。英検で覚えた単語は確実に共通テストでも役立ちます。

リスニング基礎力:英検のリスニング対策で培った「音の認識力」は共通テストでも有効です。ただし、共通テストのリスニングは長時間に及ぶため、慣れが必要です。

読解の基礎技術:英検の長文読解で用いられるスキミング、スキャニングの技術は、共通テストではより重要性が高いものとなります。

 

注意が必要な「転用できない部分」

語彙問題への依存:英検では語彙問題で得点を稼げますが、共通テストには語彙問題がありません。文脈から意味を推測する力が重要になります。

精読重視の姿勢:英検では正確性が重視されますが、共通テストでは速度が重要です。「完璧に理解してから次に進む」という姿勢では時間不足になります。

ライティング・スピーキングへの偏重:英検ではライティング・スピーキングで点数を稼ぐことができますが、共通テストはリーディング・リスニングのみです。

 

■出願戦略への具体的活用法

現実的な得点見積もりの計算方法

自分の英検スコアから共通テスト得点を見積もる際は、以下の段階的なアプローチを推奨します。

ステップ1:基礎見積もりの算出

自分のCSEスコアから、前述の表を使って「中央値」を確認します。

ステップ2:個人要因の調整

以下の要因を考慮して、基礎見積もりを調整します:

  • 英検取得からの期間:長期間経過している場合は減点
  • 速読力:速読が苦手な場合は減点要因、得意な場合は加点要因
  • 共通テスト対策期間:対策期間が長いほど得点向上が期待できる
  • 模試での安定性:安定性が高いほど予想の信頼度が上がる

ステップ3:リスク管理の観点

受験戦略上は、以下の3つの数値を算出することを推奨します:

  • 安全見積もり:調整後得点 – 20点
  • 現実見積もり:調整後得点
  • 挑戦見積もり:調整後得点 + 15点

英検利用入試との戦略的使い分け

多くの大学で英検スコアを共通テストの代替として利用できる制度があります。どちらを選ぶべきかの判断基準をご紹介します。

判断基準 英検スコア利用が有利 共通テスト受験が有利
CSEスコア水準 級の合格基準を大幅に上回る 合格基準ギリギリ
共通テスト対策状況 対策不十分・時間不足 十分な対策期間を確保
他教科とのバランス 他教科に時間を集中したい 英語も含めて総合力で勝負
本番での安定性 本番に弱い・緊張しやすい 本番に強い・プレッシャーに慣れている
志望校の換算制度 有利な換算率を採用 共通テスト有利の換算得点

⚠️ 本記事の注意事項

1. データの不完全性について

この記事で示した具体的な数値の多くは、限られた研究データと受験指導現場での経験を基にした推測値です。統計的に十分検証されたデータは少なく、あくまで目安として参考程度に留めてください。

2. 研究データの制約

英検と共通テストの相関に関する大規模な公開研究は限られており、大学単位での小規模調査が主体です。サンプル数や対象者の偏りにより、結果の普遍性には限界があります。

3. 対策効果の個人差

同じ対策をしても、効果には大きな個人差があります。記事中の得点向上に関する表記は、一般的な傾向であり、すべての人に当てはまるわけではありません。

4. 年度による変動

共通テストの難易度は年によって変動するため、この記事の予想得点も変動します。最新年度の平均点などを参考に、適宜調整してください。

5. 英検取得時期の影響

英検取得から共通テスト受験までの期間が長いほど、予想精度は下がります。特に2年以上経過している場合は、現在の実力を別途確認することを強く推奨します。

 

より正確な実力把握のための推奨事項

  • 模試の活用:少なくとも2回以上の共通テスト模試を受験し、安定した得点を確認する
  • 過去問演習:本試験の過去問を時間通りに解き、実際の得点を確認する
  • 複数年度での確認:異なる年度の問題を解いて、年度による得点変動を把握する
  • 専門家への相談:予備校教師や進路指導教諭に、個別の状況を相談する

■まとめ:データを活かした現実的な受験戦略

この記事から得るべき重要ポイント

核心となる3つの理解

1. 相関は「中程度」─完璧な予測は不可能

英検と共通テストの相関係数は0.5~0.6台です。

これは「関係はあるが、完全ではない」ことを意味します。英検2級=共通テスト140点という単純な等式は成り立ちません。

実際には±20点程度の幅があることを前提に戦略を立てましょう。

2. 対策によって結果は大きく変わる

同じ英検スコアでも、共通テスト対策の程度によって20~30点の差が生まれます。英検を持っているからといって安心せず、共通テスト特有の対策を怠らないことが重要です。

3. 英検学習は確実に基礎力になっている

英検で身につけた語彙力、文法力、読解力は共通テストでも確実に活かされます。ただし、それだけでは不十分で、共通テスト特有のスキルも身につける必要があります。

 

実践的な行動指針

現状把握:まず自分の立ち位置を正確に知る

英検のCSEスコアを確認し、この記事の換算表で大まかな目安を把握してください。ただし、それを「確定値」ではなく「出発点」として捉えることが重要です。

実力確認:模試や過去問で現実を直視する

換算表の数値に満足せず、実際に共通テスト形式の問題を解いて現在の実力を確認してください。多くの場合、最初は予想より低い得点になるはずです。それが現実的なスタートラインです。

対策立案:弱点を特定して効率的に改善する

英検と共通テストのギャップを埋める対策を重点的に行ってください。特に時間配分、図表問題、複数文書問題、特有のひっかけ問題は英検経験者が苦手とする分野です。

戦略選択:英検利用と共通テスト受験を使い分ける

志望校の入試制度を詳細に調査し、自分にとって最も有利な方式を選択してください。リスク分散のため、可能であれば両方の準備をしておくことを推奨します。

継続的見直し:定期的に戦略を調整する

模試の結果や学習の進捗に応じて、定期的に戦略を見直してください。当初の予想と実際の成績に大きな差がある場合は、志望校選択も含めて柔軟に調整することが重要です。

 

おわりに

この記事ではデータと統計に基づいて「現実的な目安」をお伝えしました。しかし、最も重要なことは、みなさん個人の可能性はデータの枠を超えうるということです。

統計は「平均的な傾向」を示すものです。適切な対策と十分な努力により、多くの受験生が統計値を上回る結果を出しています。

英検準2級から共通テスト160点を取る人もいれば、英検2級でも120点にとどまる人もいます。

 

データは出発点、ゴールを決めるのはあなた自身

 

英検のスコアは、あなたが持っている「基礎的な英語力」の証明です。

それは確実にあなたの武器になります。

でも、その武器をどう使うか、どこまで磨き上げるかは、これからのあなたの努力にかかっています。

共通テストという新しい戦場では、英検とは異なるスキルが求められます。

でも、恐れることはありません。

基礎力があるあなたなら、適切な対策により必ず目標を達成できるはずです。

データに裏打ちされた戦略を立て、現実的な目標を設定し、でも最後は自分の可能性を信じて挑戦してください。

あなたの努力が、統計を超えた素晴らしい結果につながることを心から願っています。