受験生必見!:学習効果を最大化する「本当にわかる」3つのポイント

ディアロメンバーの皆さん、こんにちは。

前回は、受験合格に必要な要素を

「勉強をはじめる」
「質を担保する」
「量をこなす」
「期限に間に合わせる」
の4つに分類し、「勉強をはじめる」について解説しました。

今回は第二回、「質を担保する」についてお話しましょう。

せっかく勉強するなら、使った時間や労力の分成績は伸びて欲しいと思うのが人情だと思います。

しかし、現実にはやったけど伸びない、ということは往々にして発生します。

それをどうしたら防げるのか、今回の記事がヒントになれば幸いです。

 

さて、ディアロという塾は、説明することで「わかったつもり」を解消することを強みとしています。

勉強しているのに伸びない問題のもっとも多くの原因はこの「わかったつもり」です。

じゃあ「わかる」って、一体どういうことだろう?

そう思ったことはありませんか?

教科書を読んでも、先生の話を聞いても、模試の解説を読んでも、なんだかピンとこない。

そんな経験が誰にでもあるはずです。

「わかったつもり」と「本当にわかった」の間には、深くて大きな溝があります。

今回の記事では、その溝を埋めるためのヒントを、皆さんと一緒に探していきたいと思います。


なぜ「本当にわかる」必要があるんだろう? 入試の変化とその背景

「本当にわかる」を知る前に、それがなぜ必要なのかを考えてみましょう。

小難しいことはいいから、勉強なんてとにかくたくさんやりゃあいいんだよ、という方は多くいらっしゃると思います。

確かに、それも一つの答えです。

しかし、ここ数年で事情が急に変わってきています。

左は2020度まで行われていたセンター試験、

右は2025年度の共通テストの問題です。

 

どちらも2次関数の問題ですが、内容がまったく違うことは一目でおわかりいただけると思います。

このような大学入試の変化は、学習指導要領という日本政府が掲げる教育方針の変更によって起きています。

時代が進むことによる社会の変化は社会で求められる能力の変化を生み、それが教育に反映されることで学生が学ぶ内容も変わっていくのです。

 

現在のような、詰め込み教育から脱却し、考える力をつけようという教育は実は1977年から始まっています。

これは過熱する受験戦争への反省や、高等教育の普及によって落ちこぼれが顕在化したことが原因と言われます。

経済成長によって社会が安定し、人間性を尊重するようになったという見方をすることもできます。

 

学習指導要領の変遷をかいつまむとこんな年表になります。

1977年 ゆとりある充実した学校生活 授業時間の削減

1989年 思考力・判断力・表現力などを重視した新学力観 関心・意欲・態度

1998年 自ら学び自ら考える力などの生きる力 授業時間の削減 ※いわゆるゆとり教育

2008年 「ゆとり」か「詰め込み」かではなく、知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成の両立 授業時間の増加 ※脱ゆとり教育

2017年 主体的・対話的で深い学び 授業時間の増加

 

思考力・判断力・表現力という言葉は現在も使われていますが、これの初出はなんと平成元年でした。

かなり以前から考える力を重視する教育は行われていたことがわかります。

しかし、先の数学は2020年度までと2025年度の比較でした。学習指導要領の変遷と比べるとずいぶん急な変化に見えます。

 

この短い期間で何が起こっているのか……その答えがこれです。

尋常ではない急速な情報化。

2008年当時は990Gbpsほどですから、情報通信量は15年間でおよそ35倍です。

iphone6sの発売が2015年、インスタグラムの日本上陸が2014年、ウーバーイーツが2016年、メルカリが2013年からスタートしています。

ネットフリックスやアマゾンプライムビデオも2015年です。

皆さんがよく知っているこれらのサービスが始まったのはほんの10年ほど前、それ以前はインスタもウーバーもネトフリもなかったと考えると、社会の変化のすさまじさがわかります。

 

このように現代は第4次産業革命と呼ばれる人類史上でもまれにみる強烈な変革期にあります。

ここに世界的に流行した感染症や、AIの台頭、少子化、環境問題、国家間の勢力バランスの変化などが加わり、来年社会がどうなっているかもわからない混沌状態となっています。

このような状況ではこの知識さえ身に付ければよいという「正解」ば存在せず、「自分で考えてなんとかしてくれ」と言わざるを得ません。

そんな無責任な、と思われるかもしれませんが、教えたところで数年で状況が変わってしまうのですからどうしようもありません。

そのため、自分で考える力を育てることが喫緊の課題となっているのです。

そうした社会の要請に答えるように、大学入試も変化しています。

情報通信量の増加→人が触れる情報量が増加している→情報処理能力が問われるように。

急激な社会変化→これまでにない新しい問題に自分で考えて対処する→実用場面を想定したり、その場で考える力が問われるように。

 

その場で考えるということ

人間は思考するときに以下の3種類の推論を使いこなしますが、今後は③のアブダクション推論がより求められるようになるとも言えます。

①演繹:一般的な原理原則から個別のケースに当てはまる結論を導く

②帰納:多数の実例から一般法則を導く

③アブダクション:個別のケースを観察して仮説を立てる

 

画像の英語の場合で言えば、

“could not only reduce hunger but also make”という表現が登場しました。

これは3通りの解釈の仕方があります。

  1. reduceだけでなくmakeもできなかった
  2. reduceだけでなくmakeもできた
  3. reduceだけできずmakeはできた

 

not only but alsoという熟語表現のnotの扱い方によって、まったく異なる意味になってしまいます。

今回はcouldというnotと結びつきやすい単語が来てしまったため判断が難しくなっています。

こうしたケースについてはほとんどの教科書・参考書には載っていませんので①演繹的に学ぶことは難しく、

なかなか英文で見かけることも少ない組合せなので②帰納的に学ぶことも難しい。

そのため、多くの方が③アブダクション的に仮説を立てて判断することになる問題でした。

 

こうした入試の変化に対応することになるのが学生のみなさんであり、考える力を身に付ける必要があります。

そして、考える力は物事を本質的に理解していることが前提になります。

そのため、普段の勉強から単なる暗記や反復ではなく「本当にわかる」ことが必要になるのです。

 

 

「わかる」とはどういうことか

前置きが長くなりました。

「わかる」とはどういうことか。これはたいへん深遠なテーマで、様々な説が存在しますが、今回は大学受験に焦点を合わせて3つの側面から解説します。

「わかる」という状態は、受験勉強においては、「学んだ知識を初見の問題を解く際に活用できる状態」と考えてください。

これがすべての科目のあらゆる範囲でできれば間違いなく合格点が取れますよね。目指すべき地点はここです。

それでは、「学んだ知識を初見の問題を解く際に活用できる状態」とはどのような状態なのか、詳しく解説します。


1.言葉が何を指すか具体的にイメージ出来ること

言葉(や記号)と現実の世界が結びついていることです。

例えば、私たちは「リンゴ」という言葉を聞いた際、頭の中に赤い丸い果物を思い浮かべます。→🍎

言葉を単なる音ではなく、具体的なイメージと結びつけて理解しているわけです。

しかし、イメージができていないと、「リンゴ」という言葉を聞いても、それが何を指すのか全く理解できません。

赤ん坊が初めて「リンゴ」という言葉を聞いた時、それが何なのかわからないはずです。

 

割合の概念も良い例です。「1/4」と言われても、それが何を意味するのか理解できません。

何かを4等分に切るイメージがなければ、ただの数字の羅列にしか見えないでしょう。

その場合、「1/6」と「1/4」のどちらが大きいのか通分して計算しないといけませんが、

下記のようにピザをイメージできれば計算せずとも判断できます。

 

言葉が何を指すか具体的にイメージができているとは、そのような状態を指します。

また、このイメージとは何も実際の物体だけでなく、感情(joyfulとfunはどう違う?)や動作(lookとwatchはどう違う?)、「無限」のような人間の感覚では正確にはとらえられないものも対象になります。

 

2.知識のネットワークに取り込んでいること

人間の脳内では、知識はバラバラに存在するのではなく、互いに関連し合い、複雑なネットワークを形成していると考えられています。

このようなネットワークは、ノード(概念や言葉)とリンク(ノード間の関係性)によって構成されます。

 

例えば、「イヌ」🐶という概念を中心に考えると、次のような概念ネットワークが考えられます。

  • 「イヌ」は「動物」の一種である。
  • 「イヌ」は「ほ乳類」の一種である。
  • 「イヌ」は「四足歩行」という形態で行動をする。
  • 「イヌ」は「鼻がいい」という特長を持つ。

これらの関係性を線で結ぶことで、「犬」という概念が他の概念とどのように関連しているかを視覚的に理解できます。

 

後述のスキーマも同様ですが、この知識のネットワークは正解の形があるわけではなく、人それぞれが各々のネットワークを作り上げていくものです。

例えば、一見関係のないもの同士を比較して共通点や相違点を見つけ出せば、その人以外が語ることのできない話が出来上がります。

お菓子のグミと昆虫のアリは全く関係のないものに見えるが、高所からの落下に耐性があるという点で似ている、とか。ミツツボアリなんて甘いアリもいます。

そんなネットワークを作っても「不正解」ではないわけです。これをよくやっているのが現代文の評論(論説文)ですね。

 

物事を記憶するときは、このようにして知識のネットワークに取り込むことで、定着しやすく、思い出しやすくなります。(私はグミを見るたびアリを思い出しそうです)

裏を返せば、知識と知識のつながりが少ない場合は「忘れやすいし、使える場面が少ない」ものになります。

 

3.適切なスキーマを構築すること

スキーマとは、簡単に言うと「頭の中にある情報のフィルター」のようなものです。

私たちは、過去の経験や知識に基づいて、世界を理解するための「情報の整理整頓ルール」を頭の中に作っています。このルールがスキーマです。

例えば、「カフェ」というスキーマを持っていると、カフェに入ると、席に案内され、メニューを見て、注文し、ドリンク等が運ばれてきて、飲食する、という一連の流れを予測できます。

これは、過去のカフェでの経験から、「カフェではこういうことが起こる」という情報のフィルターができているからです。

 

スキーマは、私たちが入ってくる情報を取捨選択するフィルターとして3つ機能を持ちます。

情報の選択:

スキーマは、関連する情報に注意を向け、関係のない情報を無視するフィルターとして働きます。

例えば、カフェでメニューを見ているとき、コーヒーの説明には注意を払いますが、隣のテーブルの会話はほとんど気にしません。

情報の解釈:

スキーマは、あいまいな情報を解釈するフィルターとしても働きます。

例えば、カフェで店員が「いつものですね?」と聞いてきたとき、それが常連客に対するあいさつだと解釈できるのは、「カフェの店員は客との関係性に基づいて対応する」というスキーマがあるからです。

記憶の整理:

スキーマは、記憶を整理し、必要なときに思い出しやすくするフィルターとしても働きます。

カフェでの食事の記憶は、「カフェ」というスキーマに基づいて整理され、関連する情報(料理の味、店の雰囲気など)と一緒に記憶されます。

 

また、自分のスキーマと異なる情報に出会った時、人はその情報を無視したり、自分のスキーマに合うように解釈したりすることがあります。

例えば、テストを解く時に、「正しくないものを選べ」という問題で正しいものを選んでしまった経験はありませんか?

視界のなかには入っていたはずですが、「選択肢問題は正しいものを選ぶ」というスキーマのために無視してしまう好例です。

スキーマの誤りに気付いたとき、人はそのスキーマを修正し、より正確な認識や判断ができるようにします。

こうして適切なスキーマを構築できれば、問題を正しいプロセスで解くことができるようになります。

 

■「本当にわかる」ようになると入試でどう違うのか

ここまで「本当にわかる」とは「具体的イメージを掴む」「知識のネットワークに取り込む」「適切なスキーマを構築する」の3つだとご紹介しました。

しかし、まだイメージがわきにくいかもしれません。

そこで、「本当にわかる」ことで入試問題へのアプローチがどう変わるのかの例を下に載せています。

大学入試レベルの英文なので理解が大変かもしれませんが、がんばって読み込んでみてください。

 

英語学習における「本当にわかる」についての例

例えば、英語の物語文を読むとき、「The old house stood on top of the hill, overlooking the quiet town. A small boy, Tom, walked towards it, his heart pounding with fear and excitement.」という一文があったとします。

  • もしそのまま訳すなら、「その古い家は静かな町を見下ろす丘の上に立っていた。小さな男の子、トムがそれに向かって歩いていった。彼の心臓は恐怖と興奮脈打っていた。」という訳になり、それぞれの単語を日本語に置き換えただけで、読者は具体的なイメージを思い浮かべにくいかもしれません。
  • しかし、先の3つを意識すると、「古い家が、静かな町を見下ろす丘の上にそびえ立っていた。小さな男の子、トムは、恐怖とワクワクで胸をドキドキさせながら、その家に向かって歩いていった。」となり、まるで映画のワンシーンのように情景が浮かび、トムの感情もより深く理解できます。

①poundingやexcitementがどういう状況や感情を示すのか、辞書的な意味だけでなく具体的にイメージ出来ていることによって、「ワクワク」「ドキドキ」など自分なりの言葉に置き換える準備ができています。

②「物語文」というスキーマが活性化していることで、より情緒的に英文を読むというフィルターがかかります。この英文が仮に自然科学論文の一部であれば「恐怖と興奮で脈打つ」のほうが適切でしょう。

③知識のネットワークによって、実際には書かれていない行間が埋められます。”small boy”は好奇心旺盛ですから”old house”を見たときの”excitement”は「ワクワク」になります。

 

いかがでしょうか。同じ英文でどちらの訳例も正しく訳せていますが、後者の方がより深く「わかって」いるのが伝わるかと思います。

ディアロメソッドでいう「状況をイメージする」とはこのことを指しています。

ディアロのトレーニングはまさにこれらの「本当にわかる」を目指して行われています。

  • イラストを描いて言葉と現実のイメージを紐づける

  • 関係を図式化して知識のネットワークに取り込む

 

  • 問題をどう考えて解くかのスキーマを構築する

 

ディアロが通常の塾と違うのは、メンバーそれぞれの「本当にわかる」のお手伝いをすることです。

「具体的イメージ」も「知識のネットワーク」も「スキーマ」も、ひとりひとりが自分の中に作り上げるものです。

授業では「本当にわかる」のお手本は示されますが、それらを咀嚼して自分のものにすることは、自分だけでやらねばなりません。

「本当にわかる」をサポートできることこそがディアロの対話式トレーニングの魅力です。

トレーニングで学んだことを活かしながら、日々の学習の中で「本当にわかる」を積み重ねていってください。

 

■まとめ

今回は「質を担保する」ことをテーマに、本当に理解するとはどういうことかについて扱いました。

次回のテーマは「量をこなす」です。

学習の質は大切なものですが、それだけで合格するかというとそう甘い話ではありません。また、量と質とは密接な関係にあります。

今回の記事の内容も踏まえながら皆さんに量をこなすことの意義をお伝えしますので、次回の記事もお楽しみに。